古見さんは、コミュ症です。 全巻

絵にかいたような美少女だけど、険しい目つきが冷たそうな印象を与える古見硝子はまさに高嶺の花。クラスの誰もが一目置きながらも話しかけられない。そして古見さんは・・・とても話下手。話しかけられただけですごい勢いで震えだす。心臓が轟音を立てて早鐘を打つ。仕舞には脱兎の如く逃げ出してしまう。猶更近寄りがたい印象を与えてしまう負のスパイラルに陥っていた。
ひょんなことから古見さんの最初の理解者になった只野仁人と、謎だらけの悪友長名なじみの二人を中心に、古見さんが100人の友達を作ることを目指すというのがストーリー。

 

コミュニケーション全般が苦手ながら、とりわけひどい話下手ということは、必然的に筆談や身振り手振りに頼ることが多い。そうした制約の元でコミュニケーションを図ろうとする古見さんの行動はいじましさや愛らしさだけでなく、一種のパントマイムとも言えるコミカルな様相を呈している。

 

もちろん、ヒロインの古見さんもハマるには十分すぎるほど魅力的だった。

 

それだけでなく、ラブコメはサンデーのお家芸ということもあり、緩急自在な展開と個性的なキャラクターは一級品と言ってよい。
緩急自在というのがミソで、緩急、すなわち「間」の使い方が他のコメディよりも頭一つ抜けている。こうした演出はときおり見せる四コマめいたコマ割りや、パントマイム状態というこれも「間の芸」に特化したレトリックを多用していることからも伺える。

 

もちろん、古見さん以外にも他のキャラクターも魅力的で、筆者のお気に入りは古見さんの母親の秀子と弟の笑介。古見さんそっくりな容姿端麗凛とした顔立ちからは想像もつかない、「永遠の17歳」とキメ顔で言ってのける様なはっちゃけた母親。古見さんが気兼ねなく(でもいつものパントマイムで)絡むもマイペースなクールボーイの弟。
そうした周囲のキャラクターもまた、古見さんのキャラクターを際立たせるだけでなく、立派に(時として鬱陶しすぎるほどに)確立しているのである。

 

漫画で抜きには語れない作画も、繊細という言葉がよく似合う筆致。
とりわけ髪への緻密な書き込み量や目の描き方から伺わせるこだわりはおそらく相当のものであろう。だからこそ、メインヒロインは艶やかな黒髪ロングの美少女だしそれも少しヒネリのある描き方がなされている。目についても同様に凛と澄ました表情や目だけが描かれたデフォルメ表現を可能にしているはずだ。

 

最後に、上述の古見さんが何とかしてコミュニケーションを計ろうとするとき等の場面における描写、パントマイムめいた行動と、鳩が豆鉄砲を食ったようなデフォルメ顔の相乗効果は破壊力抜群である。
こればかりは読んでもらわないことには伝わらないと思うので、Webサンデーで配信されている第一話を読んでみよう。